更新日:2026年8月10日
この記事では、主に70歳未満の方について解説します。70歳以上の方は所得区分や外来の上限額が異なるため、加入している健康保険へご確認ください。

前回までの記事で、高額療養費制度のしくみと、2026年8月からの変更内容をお話ししてきました。
制度の説明を読んで、こんなふうに感じていませんか?
「結局、私はどの所得区分なの?」
高額療養費の説明では「年収約370万〜770万円」といった目安がよく使われます。しかし、実際の区分は年収だけを見て決めるわけではありません。
会社員・公務員と国民健康保険では、確認する数字が違います。
私自身、病院で医療ソーシャルワーカーとして働く中で、「表を見ても、自分がどこに当てはまるのか分からない」という相談を何度も受けてきました。
そこで今回は、自分の所得区分をできるだけ迷わず確認できるよう、加入している健康保険別にやさしく説明しますね。
読者さん


先に結論:年収から推測するより、保険者の情報を確認しましょう
70歳未満の方は、まず次のように確認します。
- 会社員・公務員など:標準報酬月額、またはマイナポータルの限度額情報を確認
- 国民健康保険の方:世帯内の国保加入者の旧ただし書き所得の合計を確認
- どちらか分からない方:マイナポータル、資格情報のお知らせ、資格確認書などで保険者名を確認
ここで大切なのは、年収の表だけで「自分はこの区分」と決めつけないことです。正確な区分を知りたい場合は、加入している健康保険へ問い合わせるのが確実です。
まず、加入している健康保険を確認します
健康保険は、主に次のような種類に分かれます。
- 全国健康保険協会(協会けんぽ)
- 会社の健康保険組合
- 共済組合
- 市区町村や国民健康保険組合の国民健康保険
- 後期高齢者医療制度
マイナ保険証を利用している方は、マイナポータルの健康保険証情報で保険者名を確認できます。
資格情報のお知らせや資格確認書をお持ちの場合は、そこに書かれている保険者名を見てください。
会社員・公務員の方は「標準報酬月額」を確認






協会けんぽ、健康保険組合、共済組合などに加入している方は、標準報酬月額をもとに所得区分が決まります。
標準報酬月額とは、毎月受け取る給料や手当などを、一定の幅に分けた金額です。社会保険料や一部の給付額を計算するときにも使われます。
いちばん分かりやすい確認方法
マイナポータルへログインし、次の順で確認します。
- 「健康保険証」を開く
- 「限度額適用認定証関連の情報」を確認する
- 表示された所得区分を確認する
勤務先の総務・人事や、加入している健康保険へ「高額療養費の所得区分を確認したい」と問い合わせても確認できます。
給与明細には標準報酬月額が載っていない場合もあります。毎月の給与額だけから自己判断せず、マイナポータルや保険者の情報を確認するのがおすすめです。
マイナポータルの画面を見ながら確認したい方へ
「マイナポータルのどこを開けばいいのか分からない」という方に向けて、Instagramのハイライトで、限度額区分を確認する手順を画面に沿って紹介しています。
- Instagramで @reiko_msw のプロフィールを開く
- マイナポータルから限度額区分を確認する方法を紹介しているハイライトを見る
- ご自身のスマートフォンでマイナポータルを開き、画面を見比べながら確認する
表示される区分や内容について分からない点がある場合は、加入している健康保険へ確認してください。
2026年8月時点の区分(70歳未満)
| 区分 | 標準報酬月額 | 年収の目安 |
|---|---|---|
| ア | 83万円以上 | 約1,160万円以上 |
| イ | 53万〜79万円 | 約770万〜1,160万円 |
| ウ | 28万〜50万円 | 約370万〜770万円 |
| エ | 26万円以下 | 約370万円以下 |
| オ | 住民税非課税 | ― |
年3回以下の賞与は、毎月の標準報酬月額には含まれず、標準賞与額として別に扱われます。そのため、同じ年収でも、毎月の給与と賞与の割合によって標準報酬月額が違う場合があります。
国民健康保険の方は「旧ただし書き所得」を確認






自営業、フリーランス、退職後などで市区町村の国民健康保険に加入している方は、旧ただし書き所得をもとに区分が決まります。
旧ただし書き所得は、前年の総所得金額等から基礎控除を差し引いた金額です。一般的な基礎控除額は43万円ですが、合計所得金額が高い場合は控除額が変わります。
ここで大切なのは、本人だけの所得で決めるとは限らないことです。
市区町村の国民健康保険では、原則として同じ世帯にいる国保加入者の旧ただし書き所得を合計して区分を判定します。
2026年8月時点の区分(70歳未満)
| 区分 | 世帯内の国保加入者の旧ただし書き所得合計 |
|---|---|
| ア | 901万円超 |
| イ | 600万円超〜901万円以下 |
| ウ | 210万円超〜600万円以下 |
| エ | 210万円以下 |
| オ | 住民税非課税世帯 |
国民健康保険料の通知書に、所得や算定のもとになる金額が記載されていることがあります。ただし、自治体によって通知書の書き方が違います。
分からない場合は、市区町村の国民健康保険窓口へ、次のように聞くのが確実です。
「高額療養費の所得区分が、ア・イ・ウ・エ・オのどれになるか確認したいです」
所得の申告をしていない方は注意
病院で相談を受けていると、「収入がなかったので、申告しなくても大丈夫だと思っていました」という方に出会うことがあります。
世帯の中に所得を確認できない方がいると、自治体によっては最も高い区分アとして扱われたり、保険料や食事代の軽減を受けられなかったりする場合があります。
実は、収入が少ない方ほど、申告の有無が負担の軽減に関わることがあります。収入がなかった方でも申告が必要な場合があるため、「収入がないから関係ない」と決めつけず、心当たりがある方は市区町村の窓口へ相談してくださいね。
住民税非課税なら、必ず区分オ?






ここは、相談を受けていても誤解されやすいところです。
区分オは「本人の収入が少ない」というだけではなく、住民税非課税世帯に該当するかがポイントです。
世帯の中に住民税が課税されている方がいる場合などは、区分オにならないことがあります。
扶養関係や世帯の状況によって判定が変わることもあるため、「自分は非課税だから区分オ」と決めつけず、加入している健康保険に確認してください。
区分が分かったら、月額上限を確認します
2026年8月以降、70歳未満の月額上限は次のとおりです。
| 区分 | 月額上限 |
|---|---|
| ア | 270,300円+(総医療費-901,000円)×1% |
| イ | 179,100円+(総医療費-597,000円)×1% |
| ウ | 85,800円+(総医療費-286,000円)×1% |
| エ | 61,500円 |
| オ | 36,900円 |
ここでいう総医療費は、窓口で支払う3割分ではなく、健康保険が適用される前の10割の金額です。
具体的な計算例は、2記事目で所得区分ごとに紹介しています。
制度全体の変更点や年間上限については、1記事目をご覧ください。
計算が大変な方は、無料の入院費概算ツールへ






「区分は分かったけれど、自分で計算するのは難しい」という方向けに、無料の入院費概算ツールを用意しています。
リンクを開き、画面の案内に沿って入力してください。
ツールで分かる金額は、あくまで目安です。実際の請求額は、治療内容、入院日数、食事代、差額ベッド代、保険外費用などによって変わります。
高額療養費の上限だけでは、入院費の総額は分かりません
高額療養費の対象は、健康保険が適用される医療費です。
病院で費用の相談を受けていると、「高額療養費があるなら、入院費も上限額だけで済むと思っていました」と驚かれることがあります。
実は、入院すると上限額とは別に、次のような費用がかかる場合があります。
- 入院中の食事代
- 差額ベッド代
- パジャマやタオルなどのレンタル代
- おむつなどの日用品代
- 先進医療などの保険外費用
2026年6月以降、一般の方の入院時の食事代は1食550円です。1日3食を30日間利用すると、食事代だけで49,500円になります。住民税非課税世帯などは負担が軽減される場合があります。
「高額療養費の上限は約9万円なのに、病院からの請求はもっと高い」という場合、こうした対象外の費用が含まれている可能性があります。
ご家族が入院してしまったときは
所得区分が分かっても、実際に入院が決まると「で、まず何をすればいいの?」と迷ってしまうものです。
入院した当日から何をどの順番で動けばいいのか、相談員として現場でお伝えしている段取りを、一本の記事にまとめました。傷病手当金や付加給付など、退職や保険変更の前に確認しておきたい制度も含めて整理しています。
迷ったときの問い合わせ先
所得区分や申請方法を確認したい
加入している健康保険へ問い合わせます。
- 協会けんぽ:お住まいの都道府県支部
- 健康保険組合・共済組合:保険証情報に書かれた窓口
- 市区町村国保:市区町村の国民健康保険窓口
入院費全体や生活への影響を相談したい
病院に医療相談室や患者サポート窓口がある場合は、医療ソーシャルワーカーへ相談できます。
高額療養費だけでなく、傷病手当金、医療費控除、自治体の助成、退院後の生活なども含めて相談できる場合があります。
病院に相談窓口がない場合は、加入している健康保険や市区町村へ問い合わせてください。
まとめ
- 高額療養費の区分は、年収だけではなく加入している健康保険の基準で決まる
- 会社員・公務員は、標準報酬月額またはマイナポータルの限度額情報を確認する
- 国保は、世帯内の国保加入者の旧ただし書き所得合計で判定される
- 所得の申告がないと、正しい区分や軽減を受けられない場合がある
- 分からないときは、加入している健康保険へ区分を直接確認する
- マイナポータルの確認手順はInstagramのハイライト、計算は無料の入院費概算ツールも利用できる
- 実際に入院が決まったあとの動き方は、家族が突然入院。お金のこと、何から手をつければいい?(note・有料記事/800円)で確認できる
制度は複雑ですが、一人で全部理解しようとしなくて大丈夫です。表とにらめっこして悩むより、まずは「私の区分はどれですか?」と加入している健康保険へ聞いてみてください。
入院費全体が心配な場合は、病院の相談窓口にも声をかけてくださいね。使える制度を一緒に整理してもらえる場合があります。
参考資料
- 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
- 厚生労働省「高額療養費制度の見直しについて(令和8年8月診療分から)」
- 協会けんぽ「令和8年8月から高額療養費制度が見直されます」
- 協会けんぽ「入院時食事療養費」
※制度の内容・金額は2026年8月10日時点の公表資料をもとにしています。正確な所得区分、世帯の判定、申請方法については、加入している健康保険にご確認ください。




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